My fair Lady~マイフェアレディ~

ユウは走る。だが、向うのは街の隅。
ユウは、目的地に着くと小石を掴んで投げた。


石は二階建ての窓に当たった。


コツン、コツン、コツン……。


三回目くらいに、窓のカーテンがシャッと開いた。
眠い目を擦った黒髪の青年が出て来た。

「ん~……?」

ボーっとする頭で、下を見てその目にユウを映すと驚いたように飛び上がって慌てて窓を開けた。

「ユウ!!?」

「……カイト」

カイトは何故こんな時間にユウが、と疑問に思いつつも、とりあえず下に降りようとして、ユウの言葉に留まった。


「カイト、聞いて!!」

「何だ?」

「俺、これからいなくなるけど……」

ユウの言葉に眉間に皺を作るカイト。それでもユウが笑っている事に気付いたのでそのまま話を聞いていた。その位置からでは大量に流れている汗には気付いていない。

「俺、凄く、幸せなの!……すごく、すごく……カイト!大好き!俺、きっとカイト以上の親友には二度と出会えないと思う!!だから、最後に…あいに、きた!」

「ユウ……お前、何言って……つか、なんか息荒くないか?」

「走ったから!……カイト大好き、俺の事……忘れないでね!!」

カイトはユウの言葉に困惑するばかりで頭をボリボリ掻いて唸った。

「今からそっち行って詳しい事聞くから待ってろよ~!」

そして、再び窓とカーテンを閉める。
ユウはその誰もいなくなった窓を見つめたまま呟く。



「大好きだよ。カイト。ありがとう俺の親友……さようなら」



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