My fair Lady~マイフェアレディ~
酷く、腹が痛かった。
ポタポタと血液が流れる。もう、寒ささえわからなくなってきていた。
それでも、それでもユウは懸命に前に進んだ。
痛みが、逆にユウの意識をハッキリさせていたのだ。
大きくて真ん丸の月が、ユウを見下ろしている。
もし、神がいるのならユウは今すぐ彼に会いたいと思った。
何か一つ願いを叶えてくれるのなら……。
そう、願った時。
それは耳に届いた。
『London bridge is falling down,
Falling down, falling down,
London bridge is falling down,
My fair Lady.』
大きな金色の月にひっそりと細い黒い影。
その曖昧な姿は次第に、ハッキリと形を成し、姿を現していった。
『Build it up with wood and clay,
Wood and clay, wood and clay,
Build it up with wood and clay,
My fair Lady.』
髪が艶やかに夜の闇に青く淡く輝いて見えた。
漆黒の瞳はまるで何も映していないようだった。