My fair Lady~マイフェアレディ~

ビクリとロードの体が震えた。
混乱しすぎて何も言い返せない。

ユウは睨み付けるように叫んだ。

「狂ってなんかいない!パパンは一度だって狂ってなんかいなかった!!」

「何をどう見てきたらそう言えるんだ!見ただろ!俺は人の肉を食らい、弄び、お前でさえも……!!」


ユウはゆっくり立ち上がった。

「自分が狂ってるって、叫ぶ人がどこにいるっていうの……」

「違う。俺は本当に……」


ユウは大きく息を吸う。ロードには目の前の子供が、あのユウだとはとても思えなかった。

こんなに、ユウは大きく逞しかっただろうか…。


「違わない。パパンは、“狂ってる”んじゃない。“狂いたかった”んだ」


ドクリとロードは心臓を跳ねさせた。
ユウの言葉はまだ終わらない。

「パパンの大切な人が奪われた時も、自分は狂ってるから、だから泣かないと自分に思い込ませて、ネオをもう傷つけたくないから、自分が背負って。俺に幸せになってもらいたかったから、俺に恐怖を与えて距離をとらせて……」

ユウはボロボロと瞳から大粒の涙を流した、それでもハッキリと言葉を吐く。


「それでも、パパンの心は死んでないから。ずっとずっと悲しんでいたから、本当に少し壊れてしまった。俺が壊してしまった。だから、無意識にここまで来たんでしょう?」


「俺は……俺は……」


振り返れば、ロードは何度も自分が狂っているのだ。と思い込んでいた。

自分は狂ってる。だから、遠ざけないと。ユウを愛してるから、だから狂った自分が壊す前に。


自分が正常になってしまう理由を遠ざけるために。


それが、真実。



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