My fair Lady～マイフェアレディ～

「車の中でパパンは俺に言ったんだ。俺は強い子にならなきゃならないって。いつかパパンがいなくなっても生きなきゃダメなんだって。強くなって、生きてママンの所に戻れるようにならなきゃって」

「…帰りたいか？」

ほんの少しの間を空けて彼が問いかけて来たのを俺は首を小さく振った。

「会いたい…けどまだダメだよ」

「何故だ？」

「まだ俺全然強くないもん」

「そんな事ないぜ」

彼の言葉にキョトンとしてすぐに笑った。なんだか褒められるのがくすぐったい。

「う～ん？そうかな、…でも。でもやっぱダメだ」

「なんでだ」

彼の眉は皺を寄せて心底不思議がっていた。俺はそれがなんだか新鮮で面白い。

「パパンがここにいるからだよ！」

「何言ってんだ？お前のパパンはもういないんだぞ。だから帰るんだろ？」

「パパンならいるよ。目の前に」

俺は満面の笑顔を浮かべた。彼はそれに呆気をとられていた。
そして口元を吊り上げて、帽子で顔を隠した。


「今なら逃がしてやったのにな…」

「？」

俺は彼の言葉に小首を傾げていると彼はぐいっと帽子のツバを上げた。



「ユウ」

「なぁに」