My fair Lady~マイフェアレディ~
俺は、彼が仕事だと言うので、それ以上追及せず、かと言って止めるわけでもなく。
この青空と草原の蒼と緑の真ん中を歩く黒い彼の後姿をジッと玄関から見ていた。

風が舞い、何かを伝わせているように思わせる寒気が身柄を震わせる。
仕事に向う彼の姿に自分の心奥深くにある何かが鋭い警告を放っているのがわかる。
それがなんなのか、俺にはわからなかった。

ただ、自分にとって心地の良いものでは無い事は確かだった。
だから、俺は帰って来た彼にねだったのだ。


「仕事より俺と遊んで」


初めてだった。
誰かに自分を優先させるように言ったのは。

彼も俺の性格をわかってか、少し驚いたような顔をしていた。
だが、すぐに笑って「わかった」と俺の頭を撫でてくれた。
そして今日、俺と馬に乗る約束をしてくれた。

< 64 / 509 >

この作品をシェア

pagetop