<コラボ小説>偉大な緑の協力者~トリガーブラッド~
第二章 迷いと実行

背中合わせの‘私’の姿

 レイはそのまま奥の方へ行き角膜照合をして扉を開く。

 冷たい瞳のまま社長室へ一歩入る。
 一礼をしてジェイコブの座る場所に向い、薄笑いを浮かべて‘現状報告’を行なう。

「そろそろ実行しても問題ないかと思われます。あの子どもが懐くのに旅を合わせ五日。しかし、子どもというのは大人より面倒ですねぇ」
「くくっ、ご苦労だったな。予定は明日の朝十時頃でいいのでは? 子どもはいつもと変わりない状況が、安心に繋がるだろ?」
「地下0号にアンプルには抗体、もう一つはバイアル。まあ、特殊な芽胞ですが、私が扱うのですから危険もありません」

 二人は薬品の確認と日時の打ち合せと確認を行う。

 レイは製薬会社の上層部でありウイルス開発の責任者の一人。そしてアザムは“ある組織”への運搬役となる‘入れ物’だからだ。
 
 
 ジェイコブは窓側にいすを回転させ、後ろを向き言い放つ。
 
「違うかね? 金になる話なら場合によっては国すら裏切る。何処にでもある話だろ? あちら側には五日後に、落ち合うように段取りをつけよう」

「くくっ、そうですね。それではこちらもそのつもりで動きます。では、用意もあるので失礼いたします」
 
 窓ガラスに映るジェイコブは高笑いをしている。
 レイは冷たい瞳で小さく笑い、その後一礼をして社長室を後にする。



注)
芽胞
強い抵抗性がある。発芽して栄養型細菌となった場合の抵抗性は一般細菌と同じである。
(小説内では都合上‘特殊’としています)

アンプル
ガラスの筒に薬剤を入れた後に先端を熔封したもの。

バイアル
ガラス瓶にゴム栓をしアルミニウムなどのキャップで巻締めたもの。
バイアル内でなら他の薬剤と混ぜる事が可能。
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