カラダだけでも愛して


「雛?帰るの?」



あたしの頬を左手で撫でながらきいてきた。



「あーうん!今日午後から遊ぶ約束あってさ!」


直矢は“ふ〜ん”と曖昧な返事をするとあたしから少しはなれた。



ちょっとぐらい止めてほしかったな。



“まだいてよ。”って言ってほしかったな……。


そのことを顔に出さないように無理矢理笑った。


「じゃあ……あたし帰るね!!」



コートを羽織り、玄関に行く。



直矢はあたしの後ろをただついてきた。



靴を履き、直矢のほうを向いた。



そして優しい直矢のキスがあたしの唇にふる。



「送れなくてごめんな?」



送ってほしいよ………。


「ううん!全然平気だから!」



でも、あたしはどうせ二番目の女だから。
< 11 / 89 >

この作品をシェア

pagetop