漆黒シンデレラ
*
俺はヘトヘトになりながらも——師匠の朱液で直される作品をジっと見つめていた。
まさかまさか…陸上部のあとに招集を掛けるとは、明らかに嫌がらせとしか思えないが——
だが、どうしてもこの人には逆らえないんだよな。
「……はぁ…。疲れた、死ねる、環ちゃんが居ない」
「最後のが本音でしょう馬鹿」
不意に出た言葉につっこみを入れる里菜。幼い頃から容赦ない。
「……だって、環ちゃんが居ないと生きて行けない。疲れた時に甘いものを食べるより、俺は環ちゃんに会いたい」
「はいはい…。環に対する愛に感服するけれど、早くしゃきっとしなさいよ、もうすぐで環来るよ」
「マジっ——
「遅れましたぁああああ!!!!」
——環っちゅわぁああああん!!」
(バキゴキッ!!!!)
と、その瞬間有り得ない音が環と葉澄を襲った。師匠が般若のような顔をし二人を殴った音だったのだ。
他の生徒達は静かに合掌をしていた。
「おめぇぇら!少しは静かにしろやぁあああ!!」
((——アンタが一番煩いんだけど?!))
と皆まで言わないことだった。