漆黒シンデレラ







俺はヘトヘトになりながらも——師匠の朱液で直される作品をジっと見つめていた。

まさかまさか…陸上部のあとに招集を掛けるとは、明らかに嫌がらせとしか思えないが——



だが、どうしてもこの人には逆らえないんだよな。



「……はぁ…。疲れた、死ねる、環ちゃんが居ない」

「最後のが本音でしょう馬鹿」


不意に出た言葉につっこみを入れる里菜。幼い頃から容赦ない。


「……だって、環ちゃんが居ないと生きて行けない。疲れた時に甘いものを食べるより、俺は環ちゃんに会いたい」

「はいはい…。環に対する愛に感服するけれど、早くしゃきっとしなさいよ、もうすぐで環来るよ」



「マジっ——






「遅れましたぁああああ!!!!」






——環っちゅわぁああああん!!」




(バキゴキッ!!!!)



と、その瞬間有り得ない音が環と葉澄を襲った。師匠が般若のような顔をし二人を殴った音だったのだ。

他の生徒達は静かに合掌をしていた。




「おめぇぇら!少しは静かにしろやぁあああ!!」


((——アンタが一番煩いんだけど?!))


と皆まで言わないことだった。


 
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