漆黒シンデレラ
01.黒い繋がり
「なぁなぁー、葉澄。いい加減合コンに参加してくれよー!」
「そうだそうだ!お前が来てくれれば一発で女の子が引っかかってくれるんだから!」
……この下りがすでに10回以上も続けられているのを考えて来ると、堪忍袋の緒が切れそうだ。
一人の青年の周りには五人ほど男が集っているのだ。時は夏休み明けの九月なのに……にも関わらず未だに合コンなどに現を抜かしているなど考えられない。
(……あ"ぁ、早く授業始まれー…ていうか、早く"あそこ"に行きたい)
「…何回も言ってるだろう。俺はそんな低俗なことは嫌いだ」
「ぬぉわぁぁにが低俗だ!!それで出会いを求めようとしている俺等や女の子も低俗か!!」
「そーだ」
この青年、木城葉澄(きじょう はすみ)はスパンっと良い放ちながら次の授業の用意をしていた。
「ぐっ……こ、この好青年めっ!!さては貴様、好きな女子でも居るのか?!」
「っ——…」
「おーい、田島そこまでにしとけって。葉澄がここまで嫌がってんだからよ」
そこへ登場したのは——俺の親友である加賀美だった。呆れたそうに他の友人を見つめ、一番しつこかった田島を追い払ったのであった。
「……助かった」
「ったく嘘がつけねぇーの」
「——しょうがないだろ、本当のことなんだし」
加賀美はまたもや呆れたように息を吐いて葉澄の目の前に座ったのだ。……この男の目はいつまで経っても遠くを見つめている。
ここではない何処かを見つめ続けている。あまりにも乾いた瞳に何も言えない。