漆黒シンデレラ
「はあ——よっぽどな用が無い限り、私"なんか"に話しかけないでしょ」
「そうだ。用が無きゃテメェみたいな地味に話かけない」
妙な威圧感を放出する加賀美君はいつまで経っても慣れないし、恐怖の対象には変わりない。
いっそここまでくると清々しいと私は思う。
(……ていうか、また"はー君"関係だと思う)
「——まだ懲りないか、テメェ」
「だから私からは近づいてないって何度言えば解るの?」
恐らくこの前はー君と公園に行ったことはバレてるに決まっている。ていうかそういう考え前提でいかないときっとややこしくなるわ。
「そんなに嫌だったらはー君に首輪でも監禁でもすれば良いでしょう」
「んなことはしネェーよ。逆にテメェに首輪でも監禁でもすれば、葉澄の目に触れなくなるだろうな」
「馬鹿かアンタ、ウチの経済状況考えて言ってんのか」
「俺に馬鹿と?ほぉ…俺は将来有望な青年だ。それにテメェん所の家庭状況ほどクソ興味が湧かねぇもんネェ」
悪魔かこの男。
——だが、きっと私の家族が路頭に迷っても嘲笑っていそうな男だ。
この男に義理とか人情を説いたところで時間の無駄になるのは関の山。
「——で、それだけ加賀美君?」
「それと——テメェんところの高校の女って、お前も含めて全員腐ってるな」
急に冷めた瞳をした加賀美君に私は怪訝そうに首を傾げた。その時、バスケ部というあの悪魔は大きな手で私の髪を絡めた。
「——どういうこと?」
「そのまんまの意味だ。——にしても気持ち悪いほど黒だな」
葉澄はこの女の気持ち悪いほどの漆黒に執着している。
俺には到底理解が出来ない。加賀美はそのまま顔を歪め「じゃあな、地味」と告げて歩き出したのだった。
(——一体何だったんだ?)