漆黒シンデレラ
「お前さ、いい加減に"環ちゃん"のこと諦めたらどうだ?」
いい加減に目を覚ませと言いたい。お前と"環ちゃん"とでは釣り合わないんだ。
木城葉澄の容姿は——親友の欲目を抜いても、眉目秀麗なのだ。この有名私立進学校である大极(おおなぎ)に在校し、成績はいつも一位でそれに輪をかけてその王子のような顔立ちとスタイルは芸能人と引けを取らない。
スポーツも万能で陸上部に所属している——
加賀美は神妙そうな面持ちをする友人に追い打ちをかけようとは思わないが——いくらなんでも世界が違いすぎるのだ。
「そんな顔すんなよバーカ」
「——俺は、今でも環ちゃんが好きなんだ。好き、それだけじゃ駄目なのか…」
「……環ちゃんじゃなくても、他にも女の子は居るだろ?」
*
(——嫌だ。)
思わず、進路指導室で見た名前に眉を顰めてしまったのだ。
隣に居る友人はその名前に——
「あぁ…!また"木城葉澄"が載ってるね!凄いなこの人…また全国模試の順位上げてるし。同じ市の高校としてはなんとも言えないねー」
「そうだね…」
沸々と沸き起こるこの"嫉妬"は何処にやれば良いのだろう。
「それじゃあ先生への用も済んだし、行こうか——
——環ちゃん」
思わず窓に映った顔を見た私は——あまりにも醜かった。