漆黒シンデレラ
***
「えっ――…」
葉澄の声が書道教室に響いた。
「し、師匠?俺、ちょっと聞き間違いをしたかもしれないから。もう一度言ってください…」
「じゃから。
――小堺環は、この教室を辞めた」
心臓がとんでもない速さで脈を打っていた。
微かに呼吸が荒くなったような気がした。
少しだけ瞳孔が開いたような気がした。
握り締めた拳が震えているような気がした。
(どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして……)
頭の中に「どうして」の言葉だけが繰り返されていく。
「いいい、一体どういうことですか!!!」
「煩い葉澄!!!今は稽古中だぞ!!」
「そんなこと関係ありません!!俺に納得のいく説明をしてください!!」
俺は滅多に怒らない。
そのため俺の怒声にチビたちはおびえている。
だが、そんなの関係ない。
(繋がりが消えてしまうっ――!)
俺には焦りしかなかった。
「お前に納得のいく説明をしてどうする!これは環の事情であり、お前には関係のないことだ!!」