漆黒シンデレラ
「しかし解らんねぇーな。お前の気持ちは矛盾している。そんな思いを抱いている相手を何故、嫌いにならない」
「相手に嫌われたら、嫌いにならなきゃいけないのか」
葉澄の眼光が鋭くなった。それに気付けない馬鹿じゃないのが加賀美だ。
「……ほお、それでも好きってお前馬鹿じゃねぇーの?」
「俺はただ、ひたむきに上を向いている環ちゃんが好きなんだ。嫌われても、その焦点に居るのが俺なら良い――」
「……何ソレ。プラトニック貫く気かよ」
加賀美はまるで汚いものを観るように――葉澄を通して環を見ていた。
(気持ち悪い気持ち悪い、だからアイツが嫌いなんだ)
「んな綺麗なもんじゃない。俺はただ……環ちゃんが俺のことを忘れないでいてくれれば、それで良いんだ」
「気障言ってんじゃねぇーよ、寒気するわ。好きだけじゃ物足りねぇんだよ、恋愛は」
「何故俺が加賀美に恋愛指南されなきゃならないんだ」
葉澄は心底気味が悪そうに肘をつき、窓を見つめた。
確かに好きだけじゃ物足りない。そんなのは解っている。
だが、俺の気持ちを押し付けてどうする。
本当の意味で拒絶をされてしまえば、忘れ去られてしまえば、
俺は本当に死んでしまう。存在意義を失ってしまう。
「…お前は囚われすぎだ。もう少し視野を広げたらどうだ。あんな小娘一人に執着しすぎだ」
「……それでも、それでも。俺は想うことをやめられないんだ」
…そんな簡単に片付けられるような話ではないんだ。