漆黒シンデレラ
「…これって…俺の誕生日パーティー、か」
そこに写っていたのは、俺の10歳の誕生日パーティーの風景であった。
俺の母はお祭り好きで何か行事があると、近所の子供や俺の友達を巻き込んで色々と遊んでいた。
そして……その誕生日会に、環ちゃんも来てくれていた。
(まだ、あの時は……今みたいな距離感はなかったな)
初めて会った日から環ちゃんに恋に落ち、一枚しかない環ちゃんとのツーショットが懐かしい。
屈託ない笑顔で写っており、少しだけお洒落をして彼女がとてもいとおしい。
水色の爽やかなワンピースと同じ色のカチューシャがかわいい。
俺といえば、最大級の照れと嬉しさで何だか情けない顔して写っている。
「もう少し…良い顔はなかったのか、俺…」
落ち込むしかないな、これ。
そして、この時環ちゃんに貰ったプレゼントは――…
「……手紙と、ビーズのブレスレットだっけ…」
今でも、残してあるそれを思い出し。俺はアルバムを床に置き、机の引出しから宝箱という名の缶ケースを取り出した。
正直、環ちゃんの家の経済状況はあの頃からあまり変わっていない。
近所の悪ガキが環ちゃんに向かって「貧乏!」と暴言を吐いて、言われないいじめを環ちゃんが受けたとき、俺は全力で戦った。
(……本当、馬鹿だアイツら)
「……綺麗な字、」
あの頃の字は今の環ちゃんの面影を残している。まっすぐで、穢れのないその字。
俺はただ、ひたすら嬉しかった。
あの子の口とあの子の字で俺の名前を表現してもらえて、本当に嬉しかった。
二度と消されることないこの字。俺の中に焼きついた字。