漆黒シンデレラ
おたんじょう日 おめでとう
はすみ君へ
10才のおたんじょう日、おめでとう。
はすみ君の思い出の中にわたしをよんでくれて、ありがとう。
わたしははすみ君といっしょにおたんじょう日をいわえて、うれしいです。
あんまり上手にお手紙書けないけれど、がんばって書きました。
はすみ君にとって、すてきな10才でありますように。
わたしはまたはすみ君と楽しい一年が過ごせるようにいっぱいおねがいします。
はすみ君のおねがいがかなうといいね?
大人になってわたしとなかよくしてね?
あっ、これははすみ君へのお手紙だった!ごめんね!
学校でもお習字でもこれからもなかよくしてね?
わたしもはすみ君みたいにたくさんお習字や勉強をがんばって、はすみ君みたいになれたらいいと思います。
はすみ君がいつもがんばって何事もやっているの、わたし知ってるから!
はすみ君が大人になっても、わたしははすみ君のことをおうえんしてます。
いつまでも すてきなはすみ君でいてね。
たまきより
(あぁ…何故だろう、涙が溢れる――)
*
俺は情けなくも、涙を流した。
何故だか、幼い字と記憶と感情にただひたすら涙が溢れた。
あぁ、やっぱり環ちゃんが好きだと思わされてしまう。
こんなに素敵な女の子がどうして、いつも回りから虐げられてしまうのだろうか。
俺は知っている。
環ちゃんが本当に優しい娘だというのを。
自己犠牲が激しいけれど、それは彼女の愚かさではなくて優しさなんだということを誰も理解していない。
最早、俺だけが知っていれば良いと病んだことまで考えてしまう。
(……俺は、本当に――)
このケロイドのような感情が、いつ噴出すのか。
今の俺にはまだ、わからない。