漆黒シンデレラ
矢沢ゆうは知っていた。
事の顛末を。それがわかっていながら、己の瞳を細め笑った。
「ねえ、ヤザワさん。君の学校に"小堺環"という生徒がいるの知ってる?」
木城葉澄は半ば賭けに出ていた。自分は勿論環の自宅を知っている。
しかし、この直前で同じ学校の生徒に出会い、この質問をして自分が望む答えが返って来ることを願った。
「——えぇ、同じクラス」
「ならっ——
「でも…可哀相よね、小堺さん」
——!!??ど、どういうこと?!」
耳に飛び込んで来る声音は酷く冷たく、鋭い刃物のようだった。
周りの風景の少し歪んだ。歪められてしまった。
(——彼女、どこか遠くに引っ越したんだって)
事の顛末とは、一体何か。葉澄の頭の中にはひたすら加賀美の笑い声が響くだけだったのだ。