漆黒シンデレラ
ゆうも噂でしかわからないけど、小堺さんのお家ってあんまり経済的に良くなかったらしいの。
それにご両親のお仕事も上手くいっていなかったらしいし、とにかく苦しかったみたい。
でもさー急に転校とか、超びっくり。ゆうたち、仲良しだったから何も言わずに転校とか有り得ないー。
ねえ、そう思わないハスミくん?
——走った。走った。
現役の陸上選手の癖に何故こんなに息ができないんだ!
風よりも早く、早くと願えど——どうしても足がもつれる。
きっと、今の俺の顔は酷い顔に決まっている。呪いのようにヤザワさんの言葉と加賀美の笑顔が繰り返される。
(——あの角を曲がればっ!!!!!)
もつれそうな足を叱咤し、曲がった瞬間!!
——ドンッ!
「あだっ?!」
「痛ってぇえ!!」
葉澄は持ち前の運動神経で何とか体制を立て直したが、ぶつかってきた「男」は尻餅をつきながら「痛い」としか言っていなかった。
「って——…流(りゅう)じゃないか!!!!」
そこに居たのは、我が愛しの環ちゃんの弟であった。