漆黒シンデレラ
「うぉおおおおおい、りゅりゅう、りゅうううう!!」
「俺の名前はそんなんじゃねぇーよ!つーか、何取り乱してんだド阿呆!!」
「と、年上に向かってなんて言葉使い!」
「きょどってる時点でおめーにンなこと言われる筋合いねぇー」
ほぼ、葉澄は流の胸ぐらを掴まんばかりの勢いで詰寄り、それを回避しようとする流。
流は心底嫌そうな顔をしながら、葉澄と距離をとる。
小堺流、彼は環の2歳下の弟で現在中学三年生である。
「つーか、何なんだよ…」
「たたたた、環ちゃんは何処にいる??!!」
「はっ…?」
環の名前を出した瞬間流の表情が急に冷めた。声色も冷たくなり、敵意を含んだ視線にもなっていた。
葉澄は驚きながらも、視線を小堺家に移すと……
明らかにもう生活感のない入れ物となっていた。戸が開けっ放しになっており、そこから見える限りではもう——もう何も無かった。
「…テメェに、関係ねぇだろ」
「何?……俺は純粋に環ちゃんに用があるんだ。どこに居るのか教えてもらう」
「俺が木城葉澄、貴様に姉貴の所在を話す義理なんざねぇ」
(——一体、俺の知らない場所で何が起ってるのか)
知らない間に世界がぐるぐると巡って行く。
そう、鈍い痛みを帯びながら——