漆黒シンデレラ



「俺は…テメェみたいに暇じゃねぇんだ。退けよ、俺はその"入れ物"に用があるんだ」


"入れ物"



その言葉に、一体誰が絶望するのだろうか。確かにこの家には、家族がいたのだ。



何故、その家族の口から「入れ物」という言葉が飛び出して来たのか。


葉澄は半ば絶望した。

もう、その言葉の通り望みが絶たれたのだ。



(——俺は一体、誰の言葉を信じれば良いのだろうか)




——可哀相よね、遠くに引っ越したんだって。


——あの女は滅びるだけだ。


——この入れ物に用があるんだよ。





元々世界に色なんてなかった。ただのモノクロだけが俺の世界だった。


だけれど、その中に、俺の世界にただ一際黒く、色濃く存在していたのは環ちゃんだけだった。




葉澄は唇を噛み締めて、流に掴みかかった。




「何すんだよっ!!!」

「お願いだ!環ちゃんに会わせてくれ!!」

「お、おい!!」

「環ちゃんに……環ちゃんに!!」



流の背中に一筋の汗が流れた。この男は、本気の目をしている。


 
< 47 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop