漆黒シンデレラ
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「--なんで…」
零れ落ちた言葉を誰も拾うことができなかった。
木梨里奈は途方にくれた。手元にある携帯電話の画面を見て、半ば絶望したのである。
(……本当にどこに行ったの、環ちゃん)
どこにも見つからない。一番の友達だと自分は思っていた……
思っているだけであって、環ちゃんはどうだったかはわからない。
里奈は高校の教室で小さくため息を吐いた。ここは女子高のため、女の子しかいない空間。
独特の空気感に今更ながら、奇妙な雰囲気を感じ取った。
「……どこよ」
葉澄からの話によると、完全に家は空き家になってしまったらしい。
携帯電話に連絡してみても、音信不通。
(……師匠だけ、か)
あまり、あの人には頼りたくなかった。
だが、それしか術はないのだ。
明らかに私が単身で環ちゃんママが働いていたスーパーに行って、問い詰めてもただのプライバシーの侵害だし業務妨害でしかない。
(一体、どうして)
どうしてという疑問符しか浮かばない。
なんで私はこういうときに役に立たないのだろうか。
果てない青空を見て、また一つため息をこぼしてしまった。
手が届け、そして見つけて。
(…葉澄、アンタにしかかかっていない)