漆黒シンデレラ
*
——辿りついて見ると、環ちゃんがセクハラに遭っていた。
(ブチッ…)
「たまきちゃーん!!ぼくも抱っこして〜!」
「おれもおれもだってばー!!」
「ほらほら順番だよ、みんな」
思わず書道用具を落としてしまい、拳はワナワナと震えてしまう——にゃろう…(俺の)環ちゃんの豊満な胸に顔を——!!!!!
「何震えてるの葉澄……」
「里菜……(俺の)環ちゃんが子狼共に喰われる!!!」
「ないないないないない——…。アンタも馬鹿じゃないの?そんなに嫌なら全力で止めれば良いのに」
やれやれと首を竦めたのは友人である木梨里奈。有名私立お嬢様学校に通うが、俺と同期で3歳からの付き合いだ。
「それに副声音とか聞こえるし。にしても…環ちゃんって本当に胸、デカいわ…。羨ましい」
里菜の言う通り、環ちゃんはスタイルが良い。スレンダーな体つきなのに胸はDカップってどういうことだ?!
いやいやいや…俺は環ちゃんの体だけではなく全てが大好きだ。体だけじゃない。それに何故カップまで知っているかはストーカー行為ではない、これは里菜からの情報であって断じてストーカーという卑劣なものじゃない。
「だ、だって——…あんな笑顔の環ちゃん、俺に止められるわけない!」
「馬鹿じゃないのアンタ」
スパーンとまたもや言い放たれ、師匠には騒ぎ過ぎと怒られ——仕方無しに俺は墨を擦り始めた。
(畜生——あの餓鬼ども、ニヤニヤニヤニヤ…まるで変出者のような顔つきでいやがる)