時空少女
「あっ…………っ……」

青年が、こちらに近付いてきた。手を伸ばせば届く距離だ。彼は相変わらず冷たい目でこちらを睨む。彼は沙柚に手を伸ばしてきた。もうだめだっ!!そう思い目をつむった。


ぽふぽふっ

「………へ?」

沙柚はてっきり殺されてしまうと思ったのだが、なぜか彼の手は自分の頭を撫でていた。

「アハハハ、わりぃ。ちょっと試させてもらったんだ。あんな野郎の手下がこんな弱そうな奴使う訳ないよな〜。」

「よっ弱いですか…。」

なにが弱いとかよく分からなかったがとにかく殺されてしまう心配はしなくて、済みそうだ。

「で、こんなとこにいる理由は?」

自分の方が知りたい、と言いたくなるが言ったところで仕方ないだろう。

「どういう訳か、私の……私がいた時代ではないみたい。」

沙柚はどれを説明すればいいのか分からなかったので、すべて話すことにした。
自分が神社に行き、桜の木に触れて意識がなくなって、気付いたらここにいて、彼にあったこと。上手く言えたかどうかは謎だが、聞いてほしかった。

「…………なるほどね。それじゃ、あんたにとって此処はあんたのいた世界の過去と似た世界ってことだ。」

認めたくはないが、彼にまで言われてしまえば仕方ない。
こくんっ、と頭を小さく縦にふった。

「詳しいことは、塔に帰って話す。ここら一体は、俺のテリトリーじゃねーからな。さっさと、出ねーと。」

着いてこい。ってことか。
沙柚は、迷ったが行く当てもないため着いて行くほかすべがなかった。それに、あんな話を信じたのかは分からないが、詳しく追求してこない。後から聞かれるだろうが、自分でさえも混乱しきっている今、それはとてもありがたかった。
歩いているうちに、少しは冷静になれるだろうと思った、



< 11 / 77 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop