時空少女
「失礼します。」
スッとふすまを開けて入ってきたのは、燿十ではなかった。
色素の薄い茶色の髪に同じような瞳の色、燿十より柔らかい顔立ちで美形だ。
「燿十さんから言われてきました。」
「あっ、えと…初めまして。」
沙柚は、なんて言えばいいのか分からずペコリとお辞儀をした。
「金田沙柚さん…ですよね?
私は燿十さんの部下、翔と申します。以後お見知りおきを。」
ニコリ、と笑う彼の笑顔は違和感を感じた。あまりにも、自然過ぎて見落としそうになるが。だがあまり追求しないでおこう、沙柚はそう思った。
「では、この塔についてどれくらい聞きましたか?」
翔は沙柚の目の前にゆっくりとした動作で座った。
「全く聞いてないです……。」
沙柚は申し訳なさそうに言った。
翔は苦笑いした。
燿十さん少しくらい言っておいてくださいよ。と心の中で呟やきながら。
「そうですね…、この塔は燿十さんによって作られました。
妖がここに住んでいるんですよ。」
「妖だけ、ですか?」
「はい。人は森を抜けたとこにある町に住んでいます。」
「なんで妖だけなんですか?燿十も妖なんですか?」