時空少女
それから妖たちが集まってきて、わいわい話していた。
人間だっていったときのそれら……いや、彼らの反応はいたって普通で、キライじゃないのか。と思い安心した。きっとこれも燿十のおかげなのかな、なんて俯いてちょっとだけ笑った。


「あ!沙柚じゃねーか!」

燿十がドタバタと沙柚の方へ走っていく。沙柚は、顔をあげた。

「あ。燿十か。どうしたの?」

「いや〜。なんだか騒がしかったんで来てみただけだ。」

一瞬、燿十の顔が青くなったのは言うまでもない。

「それにしても、お前馴染むのはえーな。」

周りを見て彼は言った。
沙柚の周りには、提灯小僧や他の妖たちもいた。みんなそれぞれに話している。


「それが取り柄だから。」

少し苦笑い気味で、彼女は言った。

「さて、そこのお二人さん。」

翔もこちらへやって来た。

「沙柚さんは、案内続けましょうか?後からでもいいですけど。」

「ん〜…案内してもらえますか?」

沙柚は少し遠慮がちに言った。

「ええ、では―」

「あー、俺がいくぜ、翔。」

翔が行きましょうか。と言おうとしたとき、燿十がいった。

翔は、どういう風の吹き回しか。と思ったが、先ほどあんなけ騒いでいたわけだし、と頼むことにした。

「そうですか?では、お願いしますね。沙柚さんは宜しいですか?」

「はい。全然大丈夫です!」

「んぢゃ、行くとするか。」

そう言って歩き出した燿十に続いていった沙柚は二・三歩、歩いたところで止まって振り返った。

「あっあの!しっ翔さん!」

さて、仕事するか。と反対方向に歩いていた翔は、驚きながら振り返った。

「あっありがとう!案内してくれてっ!」

豆鉄砲をくらったかのように、目を丸くしてすぐにふっ、と微笑んだ。

「えぇ。どういたしまして。」

彼―翔が初めて沙柚に対して本当の笑顔で笑いかけた瞬間だった。


< 31 / 77 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop