時空少女
「呼び捨て、なんてみんなしてるんじゃないですか!?」
「あら、沙柚ちゃん知らないのね。」
何を?沙柚が首を傾げると、椿に続いてお藤が言った。
「燿十さんはね〜、絶対に女の子には自分の名前を呼び捨てで、なんて呼ばせないのよ。」
「だけど、彼、格好いいでしょう?どうしても名前を呼びたい女の子たちは"燿十さん"って呼ぶの。」
「「"燿十"なんて呼ぶ女の子はあなただけなのよ?」」
「………そんなこと知らなかった。」
というのか、知っていたら逆に自分にびっくりだ。と沙柚は思う。
「でも……―」
たぶん、それは会ったときに焔天ってことを知らなくて燿十ってしか呼び方がなかったから。とは、続けて言えなかったが。
「ねぇ、沙柚ちゃん。私たちね、さっき会ったばかりだけど……沙柚ちゃんには不思議な力があると思うの。」
椿が不意にそう言った。
「そうね、沙柚ちゃんは優しい。それに人を……妖を寄せつけるようなオーラがある気がするわ。」
お藤が軽く微笑みながら言った。
「そ…そんなこと、ないですよ………。」
そんなことない。だって私は、何時だって自分のことばかりしか考えられなくて、そんな自分を知られたくなくて相手に合わせてしまう。
馴染むのが早いのは、表面上でしか相手と向き合ってないから。
そう考えて、沙柚は俯いた。