時空少女
こいつ、また何か悩んでんのか。
燿十は、目の前の少女―沙柚を見て思っていた。
そして、さっきのあの2人との会話を思い出していた―…‥
「……あ?のぼせた?」
燿十が自室で仕事をしていたとき、椿と藤が彼の部屋を訪れた。
「はい。私たちと長い間話してましたから、きっとそうでしょう。」
「今は、寝ています。」
燿十は相変わらず息ぴったりな2人から事情を聞いて、
後で様子でも見に行くか。と考えていたら、2人がなかなか戻らないのに気付いた。
まだ何か言いたいことがあんのか?
彼の赤い瞳でそう2人に尋ねると、2人は少し微笑みながら話し始めた。
「燿十さん、あの子は不思議ですねぇ。」
「人の子でありがながら、私たちを怖がりませんし、お風呂にも一緒に入っちゃいますから、ねぇ…。」
「………」
確かに、"人と妖"が一緒に風呂に入ったなど聞いたことがない。沙柚はやはり、特別なんだな。と燿十は思った。
「私たち、妖は嫌われるんだ。あなたは特別なんだ。
そうあの子に言ったら…あの子なんて言ったと思います?」
燿十は少し考えてみたが、分からないので目で促した。
「私は普通だ、そう言ったんですよねぇ。"普通"なら嫌うんですけどねぇ。」
優しい顔をしながら2人は言った。
「あの子、沙柚ちゃんは"人と妖"を同じように、考えているんだと思うんですよ。」
「とても優しいですよねぇ。」
「ねぇ、燿十さん?」
燿十は黙って聞いていた。
「―――――――あの子を、沙柚ちゃんをどうか守ってやって下さい。
これは、私たちからのお願いです。」
「厚かましいのは承知しております。ですが、あの子はきっと、私たち妖や人にとって光になるような子ですから。」
「―――――あぁ。」
燿十は短いがしっかりと答えた。椿とお藤は満足そうに笑って戻っていった。
「沙柚、何か悩んでんだったら言えよ?」
沙柚は、頭上からそんな声がかかってきて、顔をあげた。