時空少女
門の前に来たが、誰もいない。沙柚はそわそわしながら待っていた。そんな沙柚を見て、くくっ、と燿十は笑った。
「な、なに?」
「いや、別に?」
なによー、と沙柚は口を尖らした。するといきなり沙柚の周りに火が飛び回る。ほたる火くらいの大きさだ。
目の前に集まっていく。だんだん大きくなり、人が乗れるくらいの大きさになった。
「え、え?」
どうしたものか、と沙柚は燿十を見上げると、燿十はニヤリと笑いながら言った。
「これに乗るぞ。」
「えぇー!?」
アイコンタクトでありえない!と沙柚は訴えるが、乗れ。と燿十は促す。
「燃えるっ燃えるよっ!」
「んなわけねーだろ!」
無理だ!と首をぶんぶんと横に振る沙柚に、しびれを切らした燿十は彼女をぽいっ、と火に向かって投げた。
「いやぁぁあああ!」
沙柚は怖くなってぎゅっ、と目をつむったが、ふわりとした何かに包まれるような感覚がして、そろりと目を開けた。
「う、浮いてる!?」
下を見ると、少し透明で赤い雲のようなものの上に乗っていた。
「だから大丈夫っていっただろ?」
よっ、と身軽いジャンプで燿十も乗ってきた。
「うん…これも妖?」
「あぁ、ふらりびっつーんだ。ふらりび、頼む。」
「あいよ〜。いつものとこでっか?」
「あぁ、」
「任せてや〜。」
確かにさっき見たときは、火だったのに実際乗ってみると、熱くないし燃えたりもしない。
妖って不思議。
またもや実感した沙柚であった。