時空少女
「なに、ボケーッとしてんだよ。いくぞ。」
「あ、うん…」
それは、燿十だった。
沙柚の手を掴んでぐんぐん歩いていく。置いて行かれたような気がしていたが、いつの間にかなくなっていて沙柚は軽く笑った。
「すご………。」
鳥居をくぐると立派な大きい神社が現れた。歴史を感じさせる出で立ちに、神聖な空気。妖を感じさせない雰囲気だった。
「ここから先は、妖などはなかなか出ませんので、ご安心を。」
前を向いたまま、たんたんと話す女の子はすこし棘がある言葉でいった。
返事が出来ない沙柚であった。
中に入ると、"あちらの世界"の神社と変わらない造りになっていた。沙柚はそのことに少し安心した。少しでも"あちらの世界"を感じることができる、と。
「着きました。澄乃様はもうすぐ此方に参られます。焔天様、どうぞお入りください。」
「あぁ。サンキュー。」
燿十に続いて入ろうとする沙柚の前に、女の子は立ちふさがった。
「焔天様のみ――」
「いや、こいつも着いてきてもらう。」
「………分かりました。では、私は此処で失礼します。」
納得いかない、というような顔をしながらしぶしぶ下がっていった。
沙柚は何も言えず嫌われてるのかな、と少し落ち込んだ。
「沙柚、いくぞ。」
沙柚はこくんっと頷いて燿十と並ぶ。
「澄乃の前では、おとなしくしとけよ?じゃねーと…………まぁ、気をつけろ。」
「は、はい…。」
沙柚は真剣な顔で言うので、澄乃っていう人はいったいどんなに怖い人なんだ!と内心ビクビクしていた。
部屋で座って待っていると、前の襖が開いて、人が出てきた。