時空少女
「燿十やったんか。久しぶりやなぁ。」
「あぁ。またふらついてたのか?」
「フラつくて、失礼やな!旅してたんや旅っ!」
「それをフラつくっつーんだよ。」
出てきたのは、綺麗な長い水色の髪を後ろで尻尾のように一つにくくり、格好いい顔立ちのここでは珍しい関西弁の男―――澄乃だった。
あんぐり、と沙柚は口を開けたままだった。
すると、澄乃は笑い出した。
「あははは!なんやおもろい顔してるなあ!そない俺が珍しいんか〜?」
澄乃はそう言いながら、沙柚の前に座る。
沙柚は、慌てて言った。
「いっいえ!ただ想像と違ったので驚いただけです!」
「想像て?何やと思ってたん?」
「あ〜、なんかもっと厳つくて怖い人なのかと…」
「ぷっ!なんやねん、それ!」
あははは、とお腹を抱えて澄乃は笑う。沙柚はどうしよう、とおろおろしていると、隣で燿十がため息をついた。
「はぁ〜。おい、澄乃。沙柚が困ってる。」
「ごめんごめん!そんな想像してたんやな。おもろいわ〜。」
「はぁ、」
澄乃は、軽く涙を拭くそぶりをしながら言った。
沙柚には、何がおもしろいのか分からず曖昧に返事した。
「せや、自己紹介しなあかんやん!俺は北の翠天、澄乃!よろしくなっ!」
「金田沙柚と言います。宜しくお願いします、澄乃さん。」
沙柚はぺこり、と座ったまま軽く会釈した。
「あかんあかん!」
「え?」
なにかいけないことをしてしまったのか、と考えていると、澄乃はニコッと笑いながらいった。
「敬語なんていらへん!それに澄乃でえーよ!」
沙柚は、こんなに明るい人だったのか!と驚いていた。仮にも"天王"なのだから、怖く厳しい感じがするのは覚悟していたが、予想を大きくはずれとてもフレンドリーだ。
沙柚は怯えていた自分が馬鹿らしく思えた。