時空少女
「ここ、」
菖蒲の後を着いて歩いている途中に綺麗な庭があった。そこには松の木や小さな池がある。その池の中には鯉が優雅に泳いでいるのが見えた。
「綺麗でしょ?」
縁側に菖蒲と2人並んで座りながら庭を眺める。隣の菖蒲は前を向いたまま話す。沙柚は彼女の横顔を見た。穏やかな顔をしていた。
「うん!凄いね。」
笑顔で沙柚は言った。
それからしばらく沈黙が続き、ふいに菖蒲が口を開いた。
「あなたは…………燿十様のなに?」
「え?」
沙柚は唐突に聞かれた言葉に、戸惑った。
「燿十様が女と一緒にいるなんて見たことないのよ。妖ならあるけど、」
「な、なにって……………」
――――聞かれても困る。
沙柚はもごもごと小さく動かした。
私は、燿十の…………なに?
沙柚は考えてみた。
恋人、な訳ないない!
ただの居候………?
用心して置いてるだけ?
それとも、"翼天"だから?
沙柚はチクッと胸がいたんだ。
「(あぁ、痛いなぁ。)」
沙柚は無意識に胸のあたりの服を握った。
沙柚は、燿十に惹かれかけていた。だが、彼女は気付かないふりをしていた、というよりかは、気付きたくなかった。だんだんと膨らんでいく自分の気持ちに、沙柚は蓋をした。
きっと自分は、役に立つから居させてもらえているだけ。
そう思いながら。
「――――それで?」
菖蒲がこちらを向いた。
沙柚はとっさに作った笑顔を向けていった。
「っ、ただの居候!」
「………ふ〜ん」
何か探るような目でみられて、沙柚はバレないように話をかえた。
「あ!すす澄乃さんって、五大天王の1人なんだよね!」
菖蒲は、何か言いたげだったが沙柚の質問に答えた。
「えぇ。"北の翠天、澄乃"って呼ばれていらっしゃるわ。」