時空少女
結局、このまま縁側でのんびりすることになった。というのも、澄乃がいい天気だからここにしよ!といったからであるが…。
菖蒲はお茶を入れに行くと言って、戻っていった。
そんなこんなで、沙柚は只今困っていた。なぜなら澄乃が沙柚の隣にぴたっと座って、顔を覗いてくるからだ。
「あ、あの〜…何かついてますか?」
「いや、沙柚ちゃんは可愛ええな〜って思って見てるだけやで?」
「あっ、ありがとございます……」
相変わらずの綺麗な顔でニコリと笑う澄乃に沙柚はたじたじだった。こっぱずかしいセリフをよく言えるものだ、と思いながら。
すると、燿十は溜め息をついた。
「はぁ、澄乃。」
「はいは〜い。なぁなぁ、沙柚ちゃん?」
沙柚は、ん?と首を傾げて続きを待つ。澄乃は真剣な顔をして言った。
「"此処"気に入った?」
「え………、」
沙柚はドキリとした。澄乃が言う"此処"と言うのは、きっと"この世界"という意味だからだ。
何故、澄乃が……。と思ったが燿十あたりがいったのだろうと解決した。
――――それより
"気に入った"か…。
気に入っているのはたしかだ。
歴史が好きな私にとって、此処は楽しい。まだまだ知らないことだらけだが、だから知りたいとも思う。それに、燿十…………。
でも、帰りたい気持ちは残っている。
沙柚は少しうつむいてしまった。
「あ〜、ごめん。変なこと聞いてもた。気にしんといて!」
ハッとしたように、沙柚は顔を上げて、澄乃を見た。彼はすこし苦笑いだった。
「い、いえ。私、此処が、好き、ですよ。」
「、ほんま!?」
「はい。此処は、優しいです。」
「優しい?」
燿十がすこし眉を寄せて言う。
沙柚はこくりと頷いてから言った。
「真実を言えない私を、信じてくれたり、良くしてくれたり…。
疑ってても、です。」
「沙柚ちゃん……」
――――そう、
彼らはみんな優しい。
なんだかんだ言って、面倒みてくれたり話しかけてくれたり。
いつも、気付いたら必ず声をかけてくれる。
「"此処"、好きです。」
今度は、はっきり言えた。