時空少女


「っ、くそ…」


燿十は傷む体を引きづりながら歩いていた。燿十の家というか小屋の方へ急ぐように。歩く度に激痛が走り顔をしかめる。
足に力が入らなくなって座り込んだ。

「ふぅっ、」

ようやく止まった血を見て、溜め息をつき目を閉じた。


「おやおや、おんし混じり者かえ?」

急に聞こえた声に燿十は警戒した。周りを見渡して姿を確認しようとする。

「こっちだよ。」

「っ!?」

勢いよく向いた先には、とても大きな顔だけの妖がいた。
そのギョロリとした目は燿十を鋭く見つめ、大きな口は舌なめずりをしている。

「混じり者は喰ろうたことないがねぇ、上手そうだねぇ。」

「てめぇっ、!」

燿十は睨み返すが無意味だった。体はもう言うことを聞かない、抵抗する術がない。


「大丈夫、痛みなど感じぬよう一飲みにしてやるからねぇ。」


物凄い速さで燿十の側まで飛んでくる。大きな口をさらに開けて。
燿十は、もうだめだ。と目を閉じた。



< 72 / 77 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop