時空少女
「なにしとんねんっ!」
なかなかこない痛みに疑問を抱き目を開けると、自分の目の前にさっき置いてきたはずの澄乃がいた。短刀で妖を防いでいた。
「なっなんでお前が……!?」
「そんな怪我してんのに、ハイソウデスカー、ゆーて帰れるわけないやろっ!アホちゃうかお前!」
「あっ!?」
澄乃は物凄い剣幕で燿十に言った。
妖が一旦引いてまた迫る。
澄乃はギラリと妖しく黒光りする短刀を持ち、再び迫る妖に備え構えなおした。
「次から次へと、面倒くさいねぇ…。大変だねぇ…。」
「っ、その割にっ、随分、余裕そうやん!」
ガキンッ、と澄乃が防いでは妖がまた攻撃をする。それの繰り返しだが、徐々に澄乃は押されていく。
「大口叩くわりに、弱い。所詮わ人だねぇ。なんと弱く脆い生き物なんだろねぇ。」
「チッ、弱い弱いっ言うなやっ!」
「事実だからねぇ。」
妖に傷一つ見当たらないが、澄乃には、だんだんと軽い擦り傷から少し深い切り傷まで目立つようになってきた。
「うるっ、さい奴やなぁっ!」
「哀れ、憐れ、」
そんな2人を燿十は黙って見るしかなかった。彼の手わ血がにじみでるほどキツく握り締められていた。まるで動けない歯がゆさをその痛みに変えているようだった。