時空少女
第一章

全ての始まり

ミーンミンミンミーン

ブラウンの長い髪をした少女は、肌がジリジリと焼けていくのを感じながら神社に向かって歩いていた。
暑い…。そう思いながらも、歩く速度は変わらず、休むつもりもない。
少女もとい沙柚が向かう神社は、これといった物があるわけではない。ただ、神社の奥の方に一本だけひっそりと、しかし力強い何かを感じさせるような太く大きな桜の木があるだけだ。彼女はその木が大好きだった。夏の木は、花があるわけではないが、緑色の生き生きとした葉を身につけ息づいているのを感じれる。だから彼女は、そこへ向かうのだ。
彼女が神社へ着いたとき、不意に違和感を感じた。何かが違う、と。周りを見渡しても何もないが、通い慣れたこの場所で、違和感など感じるのだからやはりおかしいのか、と疑問を持ちながらあまり気にとめずに目的地へと足を進めた。

桜の木の周りは、まるで聖域のように感じた。力強く息づくそれは、眺めているだけで不思議と吸い込まれそうになる。
木の下に行き、いつものように木の幹に触れた。
瞬間、ドクンッ!!と周りの空気と自分の心臓が震えた。

な、にこれ…。少女は、急に怖くなり目をつむった。血が逆流しているかのように、鼓動は速くなり、心なしか手足も震える。
周りの空気がドクドクと自分の鼓動と合わせているかのように震えている。
少女の頭の中でけたたましく警報音がなった。逃げなくては…。そう思ったとき、辺り一面がさっきまでの震えが嘘のように静かになった。
恐る恐る目を開けた少女に移されたものは、少女以外の周りの景色がまるで時計の針を戻しているかのように、逆戻りしている風景だった。

少女は、その景色を意識がだんだんと薄れていくのを感じながら、ぼんやりと見ていた。
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