時空少女

出会い

沙柚は、大きな桜の木の下に倒れていた。

「ん…あ、れ?」

目を覚ました沙柚は、キョロキョロと辺り一面見渡した。

「ここ…どこなの………?」

彼女は、周りの景色が違うことに気付いた。神社があったそこは、桜の木を中心に草花が生い茂っていてまるで神社がまだ作られていないように思えた。

「神社、がない……なんで、なんで!?!?」

沙柚は困惑してなにがなんだかわからなかった。意識を失う前に何かをみていた気がするのだが、それがなんなのか思い出せなかった。
急に不安になり、叫んだ。


「だれかっ!誰かいないの!?」

「いきなり大声ださないでくれる?」

透き通ったアルトの低い声が聞こえた。だが、その声の持ち主の姿は確認できない。

「だ、だれっ!?!?どこにいるのっ!?!?」

「んな大声だすなっていっただろ?うるせー奴。」

「とにかく出てきてっ!!!」

沙柚は、とにかく人の姿を確認したかった。安心したかったのだ。

「はぁ、わかったよ。」

彼女は不意に目の前に現れた姿に思わず息をのんだ。
引き締まった無駄な筋肉のない細身の身体、風に揺れて輝く金色の髪、筋の通った鼻、スラッとした燃えるような赤色の切れ目、美青年というにふさわしい容姿をしていた。
眉を寄せているその姿さえも、格好いいと思えてしまうほどだった。

「あんた、どこのもの?外国?」

予想していた姿と違ったので、思わず見とれてしまった沙柚は内心慌てながら答えた。

「いや、生まれも育ちも日本なんだけど……」

「へぇー…変わった服装してんだな。」

目の前の青年は、まるで初めて見るかのように、目を細めながらこちらをみていた。
沙柚は、なにか青年の言葉がひかかっていた。
さっきから人を"もの"呼ばわりして、学校の制服を"変わった服装"と言ったのだ。
なぜ…?それを聞く前に確認したいことがあった。
ここはどこなのか。
いまは"いつ"なのか。
さっきまで真夏であったのに、こちらは夏前くらいの気候だ。
おかしい。それに、ここが自分のいた"時"ではない…と変な確信があったのだ。

「ねぇ…ここはどこ?」

彼女の質問に青年は眉を寄せた。なにを言ってるんだ?目がそう物語っていた。
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