(短編)フォンダンショコラ
特典が人気なのか、フェアが始まって3日目の今日も、売上はうなぎのぼりだった。

「いい感じで来てるな。」

ふと後ろを振り返ると、店長が立っていた。

まだ若いのに才覚と人柄で、店長になった人だ。仕事に対しては厳しいけれど、それ以外の場所ではよく私たち社員やアルバイトを気遣ってくれる。

「はい。」

あたしはそう答えた。

「デザートはなにが人気?」

「えっと・・・今の所はガトーショコラが一番みたいですね。」

「定番か。」


今のフェアで出しているデザートは3つ。

生チョコレートのアイスクリーム、定番のガトーショコラ、そして、ビターテイストのフォンダンショコラだ。

今の所、ガトーショコラ、フォンダンショコラ、アイスクリームの順番で並んでいる。


フェア中は期間が短いから、メニューごとの人気の統計を取っておくのが大事。このデータは来年のフェアで役に立つからだ。

「じゃあ今日はここらにして、余りものでも頂きましょうか。」

店長はそう言うと、さっさと厨房へ入っていってしまった。

ディナーが終わると、アルバイトはさっさと帰らせてしまうため、店に残るのは店長とあたし、あとは厨房の料理長と副料理長しかいない。

そして仕事が終わるとこの4人で余ったデザートや飲み物、まかないなんかを食べて帰る。


「おう彩、今日はなに食べる?」

もういい歳の料理長は、あたしのことを彩と呼ぶ。お父さんみたいな人だ。

「今日は・・・え、フォンダンショコラしか残ってないの?」

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