(短編)フォンダンショコラ
「お前さ・・・、色々考えすぎだよ。」

そして、真面目な顔で、第二声を口にした。

「考えすぎ・・・ですか。」

何となく、自分でもわかっていたけれど。改めて誰かから言われると、また違った響きを伴ってくる。

「お前がどうしたいのか、考えろよ。その彼のために、とかさ、その女の子がどうとか、そうゆうの気にする前にさ。」

「はぁ・・・。」

それが出来ないからこうなってるんじゃ、と突っ込みたくなったけれど、店長の言ってることは多分正しい。

「お前の気持ちもわからないでもない。本気で人を好きになると、人ってのはそれと同じくらい要らないもんまで考えちまうもんなんだ。」

店長はどこか経験があるような口ぶりで、そう言った。

「でもな、どんなに相手のこと思っても、考えても、全てはわかんねえもんなんだよ。5年経ったって、10年経ったって、いつかしわしわになったって、きっと相手の全部を理解することなんか出来ないんだ。」


それが、愛情の孤独ってやつかな。と、店長は淋しそうに笑って続けた。

「でも、好きなんだから仕方ない。一緒にいたいんだから仕方ない。相手の幸せが、どんな状況にあれば確実かなんて、考えるだけ無駄だ。てかそんなの考えんのはお前の自己満だよ。」

「自己満・・・?」

そうなの、かな・・・。

あたしは、あたしがいない方が、隼人のためになると思った。

でも、それって間違ってるのかな・・・?


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