(短編)フォンダンショコラ
「隼人・・・。」

会えた喜びと、不安がないまぜになって、溜まった涙が滑り落ちた。

「彩美、泣いて・・。どうしたんだよ?」

隼人がハッとした表情で、私に近寄ってくる。変わらない優しさが、嬉しくて切ない。


「隼人に・・・、会いたくて・・・。」


私は何故か、こぼれ落ちる涙を止めることが出来なかった。

さっきまでの緊張感が嘘のように、自分の気持ちに素直に言葉が出てきた。


「・・・俺に?お前、まさか、ずっと待ってたのか?」


私は、コクんと首を縦にふった。


「バッカ・・、こんなさみいのに。ちょっと待ってろよ。」


隼人はそう言うと、一旦私から離れて友達の元へと駆け寄った。


「悪いお前ら、先帰ってて。」

「あ、ああ。あのひと・・お前の知り合い?」

「ああ。」

「なぁ隼人、もしかしてお前・・・。」

「わかってんなら聞くなよ。」

「なるほどね・・・。今度ちゃんと話せよ。」

「わかったよ。」


隼人が友達と何か話していたのは、自分が泣いていたせいもあるのか、うまく聞こえなかった。友達二人は、私がいる方とは正反対の方へ歩いて行った。


隼人はすぐに、私の前まで戻ってきてくれた。


「・・どっか・・、行こうか。ここじゃ、話せないだろ?」


私は強く首を縦にふって、手で涙を拭った。恐る恐る、顔を上げる。隼人と目が合った。やっぱり隼人は、優しい目をしてる。

「手、出して。」

手?

私は、いきなりの申し出に首を傾げたが、怖ず怖ずと手を差し出した。
それを隼人はすかさず自分の手で、包んでくれた。

見上げると、

「寒かっただろ?・・行こう。」

隼人は優しく笑って、私の手を引いて歩きだした。


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