(短編)フォンダンショコラ
「この間・・・、チホがごめん。お前にひどい態度とって。悪気はなかったと思うんだ。」

「あ、ううん・・・、大丈夫。」

隼人から切り出された話。チホちゃん。この間再会した時にいた、可愛い女の子。

付き合ってるの?

そう聞きたかったけど、もし本当にそうだとしたら怖くて、口をつぐんだ。

「言わなくてもいいのかもしんないけど、チホは・・・、俺のこと・・、好きになってくれたんだ。」

思いがけない隼人の説明に、複雑に心が軋んだ。隼人にこんなに切ない顔をさせるコがいるってことを、目の当たりにしてしまったから。

「でも、付き合ってない。俺は・・・、前に再会した時も言ったけど、お前のこと・・ずっと後悔してたから。」


後悔。それは、私も同じ。

隼人の気持ちは、私と重なっているの・・?


「あの日、再会した時、本当に奇跡だと思ったんだ。ずっと、そう願ってたから。だから、追っかけて捕まえた時・・、全然変わってないお前見て、本当に嬉しかったんだ。」

隼人が静かに話してくれる、あの日の経緯。
まるで、私と同じ気持ちのようで、どうしても自分の都合のいいように考えてしまう。

「ゆっくり話したかったのに、チホに邪魔されて、彩美は帰っちまうし・・、もう二度と会えないって思ってた。諦めてたんだ、もう。だけど・・・。」


隼人はそこで、話を止めた。ゆっくりと、私の方へ顔を向ける。その目が、昔と全然変わっていなくて、私は昔と同じように、ううんそれ以上に、胸を高鳴らせた。


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