(短編)フォンダンショコラ
「んなことねえよ・・。こうやって・・、お前が腕ん中にいるってだけで・・、もういい。」

そこで、隼人は腕を開いて、私の肩を両手で包んだ。

少し赤くなっている彼の目が、私の目を捉える。

「これからは・・もう勝手に不安になるな。」

「・・うん。」

「俺もずっと・・・、お前のこと、すきだった。だから・・・戻ってきてくれるか?俺の、隣に。」

聞いた瞬間、ぶわっと涙が溢れた。

「うん・・っ、戻りたいっ・・。」


涙の嗚咽は、隼人の唇の中に吸い込まれた。
そこからは、離れてた時間を埋め合うように、お互いを求め合った。
ずっと空いていた穴が、塞がっていくような感覚。


どれだけ泣いても、足りなくて。どれだけ愛しても、足りなくて。どれだけ伝えても、足りなくて。


ただ、ただ、こんなに愛しいって思えるひとに出会えたことが、こんなに愛しいって思えるひとに愛されてることが、

こんなに幸せにしてくれるんだって、知った。


「・・もう、不安にさせたりしねえから。ずっと・・、離さない。」

「・・ん、私も、もう離れたりしない。」


私たちは、そう言った通り、離れられなくて、朝日が昇るまで、ずっとお互いを抱きしめ合っていた。








ふと、目が覚めると、もう窓からは日の光が差し込んでいた。視線を感じて、頭を少し上げると、隼人が柔らかく微笑んでいた。
それだけで、全てが満たされていく。

「・・おはよ。」

「おはよう。」

恥ずかしくて、布団に顔を埋めながら、微笑み返した。


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