(短編)フォンダンショコラ
「なーに、うずくまってんだよ。ちゃんと顔見せて。」

隼人は嬉しそうに笑って、私の頭を撫でる。

「だって・・、なんか恥ずかしいし・・・。」

「今更。それに俺は嬉しかったよ?」

「え?」

聞き返した瞬間、隼人が私と同じ目線まで、布団の中に潜ってきた。

「4年前より成長してくれてて。」

その意味がわかった私は、顔に熱を集中させた。

「ば、ばかぁっ!!」

暴れようとする私を、隼人は笑って抱きしめる。

こんな些細なことが、本当に奇跡のようで、幸せ。

「いや、でも、真面目な話さ。」

すると突然、隼人が真面目な顔になった。私は動きを止めて、大人しく隼人を見つめる。

「この4年の間に・・、誰かと付き合ったり、した?」

怖ず怖ずとそう質問してきた隼人を、可愛いと思いながらも、私は首をふった。

「誰とも付き合ってないよ。」

「本当に?」

「うん。」

厳密に言えば、デートくらいなら、何人かとはしたことがあった。隼人がいない淋しさを埋めたくて。でも誰とも、付き合うまでにはならなかった。


隼人は私の答えを聞くと、安心したように笑った。
でも、隼人はこの4年間どうだったんだろう。

隼人、モテそうだしな・・。


「ねえ、隼人は?」

私は思い切って聞いてみた。

「隼人は、この4年間・・」

「付き合ってないよ。」

私が質問を終える前に、隼人はそう答えた。

「俺も、お前と同じだったから。お前じゃなきゃ、ダメだってわかってたし。」

力強い言葉に、胸が震える。


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