(短編)フォンダンショコラ
「今の方が似合ってるな。」

隼人も同じことを思ったようだ。私ははにかんで返した。









お客として見ると、我ながら、自分が働いているレストランは料理も接客も最高だな、なんて思った。

隼人も店長のことや、料理、レストラン自体も褒めてくれて、自分の職場をこういう形で見てもらえて、好きな人に褒めてもらえて、私は本当によかったと感じていた。

デザートも食べ終わり、食後の紅茶を飲みながら一息ついた。

もう時間は23時を過ぎている。店長が特別に、私たちを居させてくれているんだろう。


そんなことを考えていたら、隼人から声をかけられた。


「彩美。」

「ん?」

そちらに顔を向ける。

すると、机の上に、小さくて少し細長い箱が置いてあった。

さっきまではなかったのに・・。

「彩美、俺、せっかちだからさ、待てなかった。」

「え?」

隼人が何を言おうとしているのか、よくわからない。
でも緊張しているのは、心なしか伝わってきた。

「本当は、誕生日まで待とうと思ってた。お前の意見も聞こうって。でももう、俺はお前を手放す気はないから。」

そこまで言って、隼人はその箱を私の手前まで差し出して、ゆっくりと開いた。

それを見て、心臓が止まる。

喜びからか、驚きからかわからない。でも、それは唐突なプレゼントだった。

そして、前から交わしていた、約束の一つが叶った瞬間でもあった。


「俺は、一生お前しか見てない。お前だけを、好きでいるって、断言できる。
だから・・・、俺が大学卒業したら・・、結婚しよう。」


私の想像を飛び越えた、まるで夢のような現実。
あまりの喜びに、涙が滑り落ちた。

隼人は、その箱の中から、小さな輪の方を取り出した。真ん中に、キラキラと光る粒が乗っている。


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