シュガーベイビー★キス
*疑うこと、信じること
「はい!カーット!」
「ぅーわ!さっむ!!」
監督さんのOKの声が掛かった瞬間、樹くんはスタッフさんから厚手のダウンを受け取って羽織った。
今は真冬ですがここのシーンの季節設定は春。
そのため新任教師役の樹くんは薄手のセーターベストに、白いワイシャツ、ネクタイという何とも爽やかな格好。
冷たい風が吹きつける気温8度の中、校庭での立ち話のシーン…
そりゃあすぐにでもダウンを羽織りたいと思うよ…
「ひまりは寒くないの!?」
「あたしはホッカイロ貼りまくってるから!」
ブレザーの裏をチラッと見せる。中には何かの武器のごとく大量の貼るホッカイロが所狭しと並んでいる。
「…普通、シャツの上とかに貼るもんじゃない?」
「シャツの上、プラス、ブレザーです!」
「確かにそれならあったかいね…」
若干呆れ気味の樹くん。
少し休憩したあと場所が変わって今度は図書館。
「次はー…あ、キスシーンだっけ。」
樹くんが台本をペラペラめくってつぶやいた。
ついに来たか…
キスシーン!!
図書館でのキス…
泉サマとの初めてのキスを思い出しちゃうな……
「…まり、ひーまりっ。」
「あ!ご、ごめん!なに?」
「いや、ボーっとしちゃってたから…キス、緊張する?」
からかうように樹くんが耳元で囁いた。