シュガーベイビー★キス
「も、もしもし!」




「あー…もしもし…」





久しぶりに聞いたな、神戸の声。




「どど、どうしたんですか!?」




「うん…いや…今、何してんのかなーと思って…」






10数メートル先で神戸がわたわたしている様子が見える。電話でもわたわたしてんのか。可愛いな…



うん…そんなこと考えてる場合じゃねえ。





「いっ今ですか!?えっと…撮影終わって…今からスタジオ出るところです!」







『結局付き合ってないならひまちゃんを繋ぎ止めてるものもないわけだし、好きって伝えてないならなおさら不確かな関係じゃん』




『女なら好きって言ってくれる方に傾くと思うけど。』







目の前にいるのに




走ればすぐ手が届く距離にいるのに、







神戸がすごく遠く感じる。






嘘の分だけ、




距離がある気がする。









「……そっか。忙しいのに…電話してごめん……じゃあ…」




「い…泉先輩!」



「ん?」




「あの…………………いや…ごめんなさい…何でもないです……」




「そう?」




「おやすみなさい…」




「…おやすみ。」






『何の根拠があって余裕ぶっこいてんのか知らないけど、もうちょっと危機感持ちなよ。』








葵の言う通りだった。






神戸を繋ぎ止めるものなんて何もなかった。



神戸がデビュー当時から面倒見てくれてる西山に好意を持ってるのは自然なことで、



今は恋愛感情じゃなくても元々好意を持ってるならそれがいつか恋心に変わる可能性は十分ある。



俺があのとき言うべき言葉は



「惚れるなよ」なんて嫉妬深い言葉じゃなくて、



「好きだ」の3文字だったのかもしれない。



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