シュガーベイビー★キス
なのに……


あたし…


何も知らないで…



家まで押しかけて…………





バカみたいだ。






そこから逃げたいのに…


足が動かない。



お願い…動いて。




2人が気づく前に、


何もなかったように、


家まで戻りたいのに…


なんで?なんで?



足は動かないし…



涙が



止まらないよ。




雨と一緒に流れて落ちる涙。


その涙と一緒にこの気持ちまで落ちて無くなっちゃえばいいのに。





重い足でようやく1歩後ずさりした時だった。





「………………あ…。」






ハルさんと目が合った。



そして泉サマの顔がゆっくりとこっちに向けられる。







ど…どうしよう…



嫌だ…



泉サマに見られたくない…












気づいたらあたしはその場から走り出していた。







走って、走って…





ひたすら走って…




走ってる間に考えた。









今ならまだ間に合う…


今ならまだ泉サマを諦められる………






さっきの場面は見なかったことにして………………



何にも知らないフリして家に戻って…………





何もなかったようにまた明日から過ごせばいい。





何もなかったように。
何もなかったように。






『…お前、次会ったとき俺の前で同じこと言ったら………ぶっ殺すよ?』




『…フッ。どんくさ。』




『……もしもまたふざけたことするヤツがいるなら…ボコボコにして、そんなこと言えねぇようにしてやる。……俺がお前を変えてやるよ。』





「………わっ!!」





ふいに現れた段差に足を取られ思いっ切りつまずくと、あたしは勢いよくその場に倒れた。


< 355 / 366 >

この作品をシェア

pagetop