イミテイション

再び車に乗り、シートベルトをしめる。


「次はどこに行くの?」


「うーん…俺は今ので満足だから、トモが決めていいよ」


いきなりそう言われても、行きたいところなんてすぐは出てこないよなぁ…
少し考え込んで口を開いた。

「じゃあ…海がいい」


あたしは海というものに、好きな人と行ったことが無い。
だから少しだけ、そういうのに憧れてたんだ。


「12月なのに?」


ちょっと笑いを含んだ声で直人がそう言った。


「寒いから行きたくなるの」


直人が吹き出す。


「お前ってさぁ…ひねくれてるよな」


「そう?」


ひねくれてるなんて言われたのは初めてだ。


「わかった、じゃあ海な」

不満そうな顔をしていると、機嫌をとるかのように彼が言った。
そして車が走りだす。

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