イミテイション
車の中はいつも決まって直人の好きなクラプトンが流れている。
洋楽はあまり好きじゃないけど、彼のおかげでクラプトンの曲は大体覚えてしまった。
今流れてるのはいとしのレイラ。
ベタだけど、あたしはこの曲が一番好きだ。
BGMにあわせながら鼻歌を歌う彼を見て、あたしは微笑んだ。
少しだけ音が外れているそのメロディが、とても可愛らしい。
「トモ、この曲はね…」
「クラプトンが、友達の恋人を好きになったときの歌なんでしょ?
それはもう聞き飽きたよ。」
こうやってこの曲が流れるたびに説明されるんだから、いい加減覚えてしまうはずだ。
恋人がいる人を好きになるって、どんなに切ないんだろう。
その辛さを訴えるかのように、彼の枯れた声は哀愁を帯びていた。
「よくわかってるじゃん。
俺さぁ、この曲をライブでやるのが夢なんだよね」
彼曰く、自分はクラプトンのカバーをするにはまだまだ未熟なんだそうだ。
「じゃあ、その時は招待してよね」
「どうしよっかな〜」
からかうように彼が笑った。