イミテイション
かれこれ数十分は経ったんじゃないだろうか。
「つーかさぁ…
なんか恥ずかしくなってこない?」
直人のそんな言葉によって、沈黙はやぶられた。
「そう?」
「恋人同士みたいで恥ずかしくなってくる」
恥ずかしいと言いながらも腕は解かないでいてくれる。
それだけのことが、今のあたしにとってはすごく嬉しかった。
「俺さぁ、ここ1年以上誰かと付き合ったりしてないんだよね」
突然そう切り出され、何を言ったらいいのか分からなくなる。
「俺の恋愛話聞いてくれる?」
「うん…」
本当に聞いていいのか分からなくて、遠慮がちに返事をした。