イミテイション
ゆっくりと通話ボタンを押す。
「はい…」
「本当に一方的だけど、トモに言いたいことがあって。
はっきりした返事とかいらないから、聞いてほしい」
少しだけ、直人の息が荒い。
何を言いだすのか全然予想がつかなくて、頭がおかしくなりそうだ。
「今度の日曜の午後6時から近くのライブハウスで、いつも言ってる友達と組んでるバンドのライブがあるんだ。
上手って言えるほどのもんじゃないけど、それに来てほしい。
それだけだから」
一方的に用件を伝えられると、一方的に切られた。
本当に調子狂うなぁ…
カレンダーを見ると、日曜はちょうど予定がなかった。
「たまには行ってやるかぁ」
さっき突き放したのが嘘のように、あたしは素直に自分のしたいままに行動しようと決めることができた。