悲愴と憎悪の人喰い屋敷
大広間への扉を開くと、残りの三人が椅子に座り寛いでいた。
三人共、俺の先輩に当たる。

「おう、やっと来たか」

最初に声をかけたのはサークル部長である宝条 勇。
まるで王様のように一番、上等な椅子に座り片手にグラスを持っている。
体格も態度も大きく典型的な不良の親玉みたいな男だが、実は大富豪のご子息。
で、その玉の輿を狙っているのが部長の片腕に寄り添う女…益田硝子だ。
『悪女』と異名を持つ程に男に貢がせるだけ貢がせておいて飽きたら捨てるという女で、俺の知り合い達も犠牲になり泣かされていた。
部長も異名は知っている筈なのだが、硝子は美人と評する程の容姿でスタイルも良い。
例え財産目当てであろうと、自分に夢中なのが嬉しいのだろう。

「すみません。車がエンストをして遅くなりました」

俺が三浦と一緒に頭を下げて言うと、部長は嘲笑うように返答した。

「何だ?お前ら安い車に乗っているんだろう?貧乏人は大変だな」

くっ!自分は高級車に乗っているからなとでも言いたいのかよ!
結局は親の金だろ!
そう反論したい言葉を飲み、俺は拳を握りしめる。

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